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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

未亡人の熱い肌。其の二

~年上女性のぬくもり~
未亡人の熱い肌04
リンリン、古風なベル音が奥で鳴り、玄関に足音が近づいた。
「どなた?」落ち着いた中年女性の声。
「あ、あのう、音羽留美子さんの友人なんですが、留美子さんが病気と聞いて・・・」
ドアが静かに押し開けられた。

忍野千鶴(仮名)未亡人に間違いない。
小さい丸襟の白いブラウス。喉元できっちりボタンが留まり、重ねた濃紺のカーディガンと
同色の足首までの重そうなロングスカート姿は、如何にも気位高く暮らす、
軍人の未亡人らしい服装だった。

「留美子さんが、病気ですって?」
首をかしげた細面の顔は白く、切れ長の眼や鼻筋は美しく整っていたが、留美子から
聞いた通りの冷ややかな表情は、映画に出て来る大奥の中臈のような熟女である。

「ええ、勤め先のデパートに電話したら、今日はお休みだとか・・・」
「まあ、留美子さんたら、またずる休みしたのね・・・悪い子ねぇ・・・」
「ずる休み・・・」私は驚いた。
未亡人は冷たい表情のまま頷いた。

「彼女は今朝も元気に出勤しました。私にも嘘をついたのですね。
 帰宅したらきつく叱っておきますから・・・」
ドアの取っ手を掴み、忍野未亡人が静かに身を引いて行く。私は狼狽した。

「あっ、あ、すいません、それなら留美子さんは何処に行ったんでしょう?」
「さあ・・・」未亡人の顔が初めて緩んだ。だが其れは冷笑のようだった。
「私には判りませんが、たぶん・・・」
ドアを閉める手をとめて、白い顔が私を見つめる。
 
未亡人の熱い肌05
「多分、昨夜も電話があった伊川さんと言う男性と、 
 何処かに遊びに行ったのではないでしょうか、今夜も帰らないかも知れませんね・・・」
静かにドアが閉まった。

私は痴呆の様に口を開けて、分厚いドア扉を見つめた。頭の中が混乱する。
伊川は私の名前だ。私ではないもう一人の伊川。それは一体誰なんだ。
私はこの下宿の電話番号を知らない。電話など、出来る訳がない・・・。 

私はフラフラと忍野家の門を出た。そして門前の狭い土の路上にしゃがみ込んだ。
冷たい夜風が頬を撫でる。其の風が、口惜しいが恋の終わりを告げていた。
心落ち着けば、線香花火の火玉が落ちた気分だ。

今夜も帰らないかも、と言った未亡人の口調では、留美子には肉体関係がある、それも
私の名を騙る必要がある秘密の愛人が居るのは間違いない。多分妻子ある身近な男。
それに気付かず、私はたかがキスぐらいでのぼせて恋人気取り、間抜けな話だった・・・。

小道に複数の男の笑顔が響き、私は腰を上げた。歩き出した前方の曲がり角から、
詰め襟姿の三人の大学生が現れた。狭い道幅を一杯に三人並んで歩いてくる。
真ん中はチビだが、左右の二人はデブの巨漢だった。

私は腹が立っている。道を譲る気は起きない。トレンチコートの方を怒らせ、
彼らの真ん中を突き抜けた。当然肩がぶつかる。勿論、彼らから怒声が沸いた。

「狭い道だ、縦に並んで歩け!」
「なんだと!どう歩こうと俺たちの勝手だ、喧嘩売ろうってのか!」
チビの手は早かった。怒鳴る声の語尾が消えぬ間に、私は鼻っ柱を殴られていた。

その衝撃よりも鼻血の鉄錆の匂いが、私の手を反応させた。
振り向きざまに左の拳をチビの顔に叩きつけた。それが彼の頭に当たって拳に激痛が
走ったが、かまわず右の拳も顔面に叩き込んだ。今度は拳にたいしたショツクもなく、
チビは吹っ飛んだ。
未亡人の熱い肌06
今度は喚きながら、肥えた男が私に抱き付いてきた。私の左腕に片手を差し込み、
腰を捻る。すくい投げだ。宙が回転して、私は路上に投げ飛ばされていた。
土の上だから痛みは少ない。跳ね起きた私は、其の男の股間を蹴り上げた。
ギャッと叫んで、男が股間を押えて膝を着く。

もう一人。一番の巨漢。腰を落として半身に構え、素早い動きで私に迫ってくる。
私は身を翻し、逃げた。三対一、それに二人の男は如何見ても相撲部だ。
癪に障るが逃げる一手しかない。

彼らが出て来た路地を駆け上がり、左に曲がり、また左に曲がって駆け降りる。
追って来る怒声が聞こえるが足は遅いようだ。ハンケチで鼻血を押えながら左に曲がって、
私は忍野家の樫の巨木の裏に隠れた。

私を見失った彼らは諦めた。声高な話し声が市電通りに降りて、声が消えた。
私鼻に当てていたハンケチを外した。鼻血は止まっていた。だがコートに散った血が目立つ。
立ち上がってコートを脱ごうとしたとき、玄関のドアが開いた。

忍野未亡人が現れ、飛び石を踏んで歩み寄ってくる。
「やはり、喧嘩してたのは君だったの・・・」
「すみません、すぐ出て行きますから・・・」
私は頭が下げて、門を出ようとした。

「待ちなさい、そんな格好では町は歩けませんよ、それに怪我しているんでしょう?」
左腕をやんわりと掴まれた。その柔らかな力と、先刻とはまるで違う優しい声に、
兄弟三人で育った私は、いたら良いのに、常に想像する姉の情愛を感じた。
私は素直に未亡人に導かれた・・・。

家の奥の風呂場で顔を洗わせてもらい、私は洋間の隣、茶の間風の畳敷きに戻った。
畳の上に新聞紙を敷き、その上に置いた洗面器の石鹸水で、
未亡人が私のトレンチコートの血を丹念に拭ってくれていた。

  1. 未亡人との恋
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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