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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十三

◇女のなやみ(Ⅰ)
ゆびさきの詩4-1
鹿児島湾を抱き込んでいる薩摩半島の南端に指宿がある
指宿を指呼の間に臨む山川港は枕崎と並んで、
かつお漁の根拠地として栄えている港だが、
沖縄密輸の盛んな頃には此処から帰って来る密輸船が可也見受けられた。

ホロと呼ばれる一本釣りのいさり船は標高920mの開聞岳を目標にして帰って来る。
*開聞岳の標高は正式には924mである*

南の突端に柳樹や蘇鉄に囲まれたブロックの近代建築が
開聞岳を背景にしてショウシャな姿を見せている。

宵闇せまる頃にはハマユウの花咲く海辺から磯の香りが漂ってくる
異国情緒に富んだ平和な夢の園こそ志津子の別荘である。
その辺り一帯に大小の温泉郡を持ちながら、俗悪な環境のない地を選んで
三年前に亡き伊集院翁が若き妻の歓心を求めて建てて呉れた。

数奇を極め、贅を極めた調度品が各部屋に満ち、
浴室には特に意を凝らして、温泉ホテルにも匹敵する
豪華な作りに成っている。
こんこんと湧き出る豊かな湯が絶えず浴槽に溢れ出て居る。
大きな一枚ガラスの向こに潮騒を聞き、
湾口を隔てた対岸の大隅半島が横たわって見える。

夜になると、その先端に位置する佐田岬の灯台が、
漁り火の中に一際よくピカピカと光を放っている。
無数の漁り火がプラネタリウムの様に、煌く様が、
浴室の中から手に取るようにうかがわれる。

十八歳の秋、四十余り年上の亡き「林業王」伊集院友隆に
惹かれ、泣く泣くその愛を受入れて鹿児島に出て来たのだ。
亡夫友隆の舐めるような愛情の中で成長してきた志津子である。

落葉の音にさえ涙するような乙女の感傷を擁く年頃に、
初恋の人と裂かれた傷跡を大きく残して来ただけに、
愛されれば愛されるほど総てが、疎ましく金に飽かして
旅行を楽しんだ。

旅先で、行きずりの男と情を交わすのが、せめてもの
レジスタンスで有った。

この数々の乱行を、気付いて居ながら、
決して怒った事のない友隆は、
大きな愛情で志津子を包み込んで居た。

男としての機能が役立たなく成ると、起死回生を頼って、
志津子の身体のあらゆる部分を舐め廻し、吸い尽くし、
指先は絶えず乳房をもてあそんで、最後に臨む陰部の臭いが鼻をついた
瞬間だけ精気を取り戻した様な気に成るのが嬉しかった。

 
指先の詩12
死ぬほどに自分を愛おしく思ってくれる男に身を任せて
居ても心の中の穴は埋められなかったが、
身体だけがその執拗な愛撫で呻き、悶えて、その身にしがみつく
女体の性の宿命が恨めしく悲しかった。

指と舌とでの愛撫にさいなまれて、悶え狂う志津子が
最後の旅行の折、旅館の仲居から貰ったコンニャクのリングの恩恵で
回生した友隆は、月に一度程だった情交が、この性具を使えば、
毎晩でも挑んで来たのだが、其れは消える前のローソクの炎の様に、
僅かに残った精を使い果たして、消えていく病的な最後の炎で有った。

ある晩、友隆は志津子に圧し掛かった侭、
消える様に静かに黄泉の国に旅立った。
本当に静かに大往生と言った平和な顔で・・・・

友隆に惹かされて、妻となって十数年、
ずうっと志津子に仕えてきたお兼ねさんと、別荘番の
老夫婦だけの生活は単調で三十を超えたばかりの
志津子には、耐えられない程に無量なものだった。

友隆が亡くなってからの一年は、その愛を受けた者は
喪に服さなくては成らず、男漁りは許されない。

“三十後家は通されぬ”と言われる女盛りの
志津子には、眠れぬままに独り、悶えて、
やるせなく己の乳房をかき抱いた夜が幾晩か・・・

恋しい初恋の辰雄の指が・・・
秘肉を探って妖しくうごめき、もだえ、うめいて
夢に精をやった、悲しい夜もあった。
思っては成らない初恋の人、処女の総てを捧げた人、
女の喜びを教えて呉れた人、
千々に乱れる心を噛み締めて涙する夜には
義理と言う字が、大きく圧し掛かって来る。

理性が説く義理と肉体が叫ぶ情感とのジレンマに
苦しむ志津子は、姉婿と成った辰雄の事を
十幾年後の今も尚忘れる事が出来なかった。

旦那の友隆の胸に抱かれて居るときも、
また行きずりの男達と明かした夜も、常に辰雄の面影を
瞳の裏に抱いて女の喜びを味わって、心の貞操だけは
守りたいと思い続ける志津子も、その瞬間の情感に
猛り狂う女体が恨めしくも、又哀れにも思えた。

あの日、あの頃の思い出が郷愁となり、郷愁が思い出
の中に美しく清められて空想を生み、空想と現実が
交錯されて、悩ましく夢を育んで、胸がときめき
欲情してくるのである。
独り寝のわびしさ、苦悩は、月のものの十日ぐらい前とも
成ると尚更に激しく燃え立ち、疼く肉体に耐えかねて、
深夜の浴室での香に咽ながら、独りオナニーを楽しんで
密かに欲望を制御する術を覚えた。

然しながら、逞しい男の肌を恋して止まぬのは
三十女の欲情の激しさであろうか・・・
こんな時、志津子はよくモーターボートを駆って海に
出るのであった。レバーを全開にして、
海原に響き裂かれるような爆発音に、やっと胸の
わだかまりを払いのけて、無茶苦茶に湾内を
駆け巡って、小さな釣り船を脅かす事も有る。
また訳も無くお兼さんや、爺やさん達に当たりちらしては、
心の中ですまなく思いながらも、どうにも成らないものがこみ上げてくる。

是がヒステリーと言うものなんだろうか?
いっそ死んでしまおうか・・と暗い日々が訪れることもある。
かといって、友隆在世中の様な反抗する対象が
亡くなった今では、男を求めて出歩く勇気もない。
名称未設定 1126
朝、夕、めっきり冷えて来た晩秋の有る日の夕方、
志津子は一人食卓に向かって、
気の詰まりそうな食事をしていた。
「奥様、珍しいお客様ですよ・・」
と、お兼さんが、にこにこ笑いながら入って来た。
「珍しいて、どなた?」
友隆の死後、誰一人訪ねる事も無く、
又訪ねられる事も無く過ごした一年、来る者と言えば
新聞配達の少年と郵便局の配達夫、
そして時折来る行商の商人だけだった。
我が家の門を叩く客の見当がつかない。

「お当てに成って御覧なさいまし」
人恋しい気持ちが苛立って、お兼さんの方を向いて、
「ねぇ・・どなたなのよ、早く教えて・・・」
「思い当たりませんか・・ホッホッ・・・」
お兼さんは尚も、悪戯ぽく笑って居る。
堪りかねた志津子が、
「意地悪ね・・」
と恨みを込めて立ち上がろうとした時、
「志津ちゃん、元気で居ますか・・・」
男らしい低音に聞き覚えの有る・・・
声の主が姿を現した。
思いがけなく、其の客は辰雄で有った。
「おらっ!辰雄兄さん・・」
と、言ったまま、暫くは次ぎの言葉が出てこなく
暫し佇んだ侭でいた。

志津子の目からは子供の様な大粒の涙が溢れ、
肩は小刻みに震えている。
どれだけこの再会を待ち望んでいた事か、
夢では無いかと思う志津子で有った。

「いらっしゃるなら、如何して其れを知らせて
 下さらなかったの、なんのおもてなしの
 用意もできていなくてよ」

辰雄の胸に飛び付きたい気持ちをじっと抑えて
志津子は懐かしい辰雄の太い指に目を遣った。
  1. 小説・指先の詩(うた)
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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