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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十四

◇女のなやみ(Ⅱ)
指先の詩13
「ウン、佐智子がね、志津ちゃんが寂しがって
 居るから、行けって突然言い出したものだから、
 あれも来たがってたけど近頃又、例の病気が
 思わしくなくなってね、僕だけ来た様な訳なんだ」
「そう・・お姉さま悪いの・・」
「悪いって程でもないんだがね・・・
 それにしても志津ちゃん、相変わらず綺麗だね
 昔とちっとも変わってないよ・・・」

辰雄は憂鬱な家の事で心配させまいとして話題を変えた。
「あーら、それお世辞?お兄さんこそ、あの頃と
 ちっとも変わってないわ・・・少し太ったのかしら
 貫禄が着いて来たわよ・・」
志津子は未だ褒め足り無い気がして辰雄を見上げたが
適当な言葉が見つからなかった。
「いゃー志津ちゃんに褒められると、お世辞でも
 嬉しく成るよ、チョツト腹が気に成って居たからね」

「お兄さん、きっき例の病気がつて、おっしゃってたけど
 姉さん、何処が悪いの」
志津子の顔にチョツト暗い影がさした。
「二年程前から、パセドウ氏病に掛かってね、
 大したことは無いんだが心臓が衰弱する
 病気だから心配だよ」
「そぅ、ちっとも知らなかったわ、母さんも大変ね」
「うーむ、それ程でもないよ、ただちょっと油断してると、
 すぐに起きて来て働きたがるのでね、其れが心配さ」

部屋の空気が暗くよどんだ時、お兼さんが
気お聞かせて、辰雄の為に着替えを揃えて来た。

 
名称未設定 1825
「積もるお話一杯有るでしょうが、お兄様、先ずは
 お風呂にでも入られて、寛いで下さいませ、
 其の間にお食事の、ご用意させて頂きますので
 お食事をなさり乍でも、ゆっくりとお話なさいませ」
「有り難う御座います、それでは遠慮なくそうさせて 
 いただきます」
待っているお兼さんに、志津子は。
「湯殿には私が案内しますから、お兼さんは、
 お食事のご用意お願いしますね」
と、着替えを持って辰雄を浴室まで案内した。

「お兄さん、本当に嬉しいわ、志津子死ぬほど
 寂しかったのよ」
あの頃の様な甘えた口調が自然に、蘇って口をついた。
「僕も志津ちゃんに逢いたくて逢いたくて、たまらなかったんだ
 でも志津ちゃんは、手紙も呉れなかったし、
 帰っても来なかったし、怒って居るのやら、
 忘れてしまったのか、と思って諦めて居たんだよ」
「忘れるものですか、お兄さんの事は一日だって
 忘れた事は無かったわ」
「本当かい、来て良かったよ」
焼けぼっくいに火が着いた、の例えの如く、二人の心は
急速に十余年前のあの頃に立ち返って、募る思いの
丈を眼差しに匂わして見詰め合った。

昔と変わらぬ優しい眼差しに志津子の胸はときめき、
今すぐにでも抱いて貰いたい欲求を、
ぐっと抑えて、その場を退いた。
戻った志津子の部屋には夕食の仕度が整えられて
辰雄の湯上りを待って居た。

居間や応接間を避けたのは、二人の雰囲気を察した
お兼さんの温かい気配りだったろう。
心づくしの料理を乗せた、大きなお膳が、艶かしい
色気を湛えている。

総ての用意が出来た所で、お兼さんは、
「奥様、今日は折角のお客様ですから、予てから
 お願いして居た里帰り先に延ばしましょうか」
言い難そうに尋ねた。
「あら、そうでしたね、此方は構わなくってよ、
 お家の方も待って居られる筈よ、後は私が遣りますし
 二、三日ぐらいは、おばあさんに手伝って貰うから
 大丈夫よ、早くお家に行ってあげてね」
「 そうですか、それでは是から行かせていただきまね
 今ならバスも有りますから」
お兼さんが帰った後は別棟に住む、爺や夫婦を除いて
この広い屋敷の中に只二人の水入らずに成った。
名称未設定 1808
「お兄さん、今夜は二人だけだし、夜が明けるまで
 お飲みに成っても結構よ、お酒は十分有りますから」
湯上りの咽をビールで一気に潤すと、飲み干したコップを
志津子の前に差し出して。
「志津ちゃんも一杯どう・・・」
「私、お酒に弱いのよ、酔っても知らないから・・」
「大丈夫・・・ぐっとあけてごらん」
弱いと良いながら辰雄の進める侭に、差しつ、差されつ、
かなりの量を飲んでいる。
今の二人には、佐和子の病気の事など頭の片隅に
追いやって、只互いの目を見て居るだけで楽しいのだ。
火の様に赤い顔とトロリとした目が何時もにも増して
色ぽく成って来た。

「お兄さん、私これ以上飲むと足を取られて、
 歩けなくなるわ、一風呂浴びて着替えて来るから
 寂しいでしょうが、暫しの間お独りで飲んでてね」
「ああ、いいとも」

湯の温もりがビールの酔いを発散させて志津子の
動きを静めた。
手早く化粧を済ませて仕立て下ろしのウールの単衣を
纏って、博多の伊達巻だけの艶姿で匂う様に戻って来た。
酔って貰いたい、酔いたいの一念でコップが幾度と無く
満たされる中に辰雄の顔にも顔にも陶然とした酔いが
上がってきた。風呂で少し冷めた志津子の酔いも、
改めて重ねたビールの為に前にも増して、何時しか
横座に膝を崩して、乱れた裾から覗く白い肢が
妖しく辰雄の胸を揺さぶった。

辰雄は胸に湧き上がる煩悩を追い払う様に、
「志津ちゃん、さあーもう一杯」
勢良く差し出すコップを志津子が、
「もうだめ・・」
と押し戻す弾みに、二人の指が触れ合った瞬間、
電光の様なうづきが指から二人の体内を駆け巡って
心臓の鼓動が止まる様なショツクを与えた。

二人の瞳が切なげに絡み合うと、辰雄の手が
志津子の指を握り締めた。
元々好き合った二人には言葉に寄る意思の
疎通は必要なかった。

志津子は初夜のあの日の様に静かに目を閉じて、
火の様に火照った顔を辰雄の胸に埋めた。
その激しい動悸が情炎の震えと成って、
密着した顔から辰雄の胸に響いて行く。
理性の衣をかなぐり捨てて、
二人の唇が相求めて重なった。
  1. 小説・指先の詩(うた)
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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